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柴原浩章先生 この度、第39回日本受精着床学会総会・学術講演会を、2021年7月15日(木)、16日(金)に神戸国際会議場で開催させていただくことになりました。伝統ある本学会を開催させていただく運びとなり、身に余る光栄に存じます。
 本学会は1982年に創設され、不妊症に悩む多くのカップルに救いの手を差し伸べる目的で、主として受精や着床に関する研究を推進し、生殖医学の発展に長きに亘り寄与してまいりました。わが国では1983年に初めて体外受精・胚移植が成功し、今では年間に5万人以上の子供たちが生殖補助医療(ART)の恩恵で誕生し、大変喜ばしいことです。一方で1971年〜1974年の第二次ベビーブーム以降、様々な要因から深刻な少子化が進み、2003年7月には少子化社会対策基本法が制定されたものの、現実的には十分な成果は得られていないと言わざるをえません。
 そこで今こそ本学会創設以来の諸先輩方のスピリッツを継承し、私たちはもう一段ギアをあげて少子化に歯止めをかける勢いで戦う覚悟が必要です。そこで今回のテーマは、未来のこの国があるべき姿を見据え、「Stop the depopulation 〜ART成功率向上に向けた叡智の結集〜」と致しました。
 これまでARTに関わる生殖内分泌学を始めとする関連医学知識、あるいは卵細胞質内精子注入法(ICSI)や胚盤胞培養という基本的なラボラトリーワークが広く普及し、一方で生殖補助医療従事者資格制度をはじめチーム医療を構成する様々な職種のスタッフは、各々が所属する学会での資格認定を目指し日夜研鑽しています。このような良質の診療技術やサポートを提供する体制が構築され、クライアントにとっては安心して最寄りの施設で不妊治療を受けることができるようになりました。さらに政府は2022年を目途にARTに対する保険制度の導入を決定し、追い風となっています。
 しかしながら私自身は、特に国が違えば平等な治療が一部のクライアントに提供されていない現実を見ますと、わが国のARTはまだまだ完成型には至っていないと考えています。そこで本学術集会では、参加者の皆様方から更なる叡智を絞ったご講演・ご発表をいただき、その中からクライアントが切望する、例え1%でもART成功率を向上できる技術や知識を拾い上げ、今後の発展に継承していければと考えています。
 2020年初頭からのCOVID-19の爆発的な感染拡大のため、多くの学術集会も感染予防対策を求められ、開催中止や延期、あるいはWEB開催やHybrid開催を迫られました。既に海外ではワクチン接種を開始した国々もあり、現時点ではまだその有効性や安全性は検証されていませんが、わが国でも早急かつ安全にワクチン接種が普及し、できましたら今回は皆様方に六甲山系と瀬戸内の海に囲まれました神戸の地へお越しいただき、face to faceでの学術集会開催を実現したいと考えています。改めまして皆様方からの温かいご支援とご協力を賜りたく、何卒宜しくお願い申し上げます。
2020年12月

第39回日本受精着床学会・学術講演会
会長 柴原 浩章
(兵庫医科大学 産科婦人科学講座 主任教授)